甲子園での選抜大会・選手権大会において、タイブレーク制導入の気運が急に高まって来ました。
4年前の選抜大会で、当時、愛媛・済美高校二年生だった安楽智大選手(現・東北楽天ゴールデンイーグルス)が計46イニングで投じた球数は772球に上った際、「投げすぎ」との世論が沸き上がりましたが、その時には導入はされずませんでした。それが、今年の選抜大会では春夏通じて史上初めて1大会で2試合が延長引き分け再試合となりました。これが、きっかけになったとも言われています。ちなみに、この4校の中で福岡・福岡大大濠高の三浦銀二選手は一回戦の岡山・創志学園高戦、二回戦の滋賀・滋賀学園高戦では延長15回引き分け試合となった試合と再試合を含めた計3試合、43イニングで475球を投げています。昨秋の新チームからの公式戦16試合を一人で投げ抜き、2081球を投げてました。
2000年の選抜大会から延長回の規定がそれまでの18回から15回に変更されました。選手の体調や、増えすぎるピッチャーの投球数を考えてのことです。来年の選抜大会からどうやらタイブレーク制が導入されることになりそうです。ただ、このタイブレーク制は現時点では勝負が着くまで行うことになり、イニング数の規定はありません。早期に決着が着くことを考えてのことでしょう。ちなみに、ピッチャーは最長15イニングまでしか投げられません。
でも、本当にタイブレーク制がいいのかどうか。そもそもタイブレーク制は試合の決着を着けるための手段だと思います。
本当にピッチャーの投げすぎを考えるのであるのならば、ワールド・ベースボール・クラッシック(WBC)のように球数制限を導入したり、投球回数に制限があれば良いと考えます。直接的な対策を取らないと連投における投げすぎについては対応が取られないままになります。
選手層が厚い強豪校なら複数で、しかも同じような力を持ったピッチャー制を敷けても、選手層の薄い高校では1人のエースに頼らなければならないのであって、そういう面があるからこそ、タイブレーク制で「早く決着を着ける=球数制限」というような発想なのかも知れません。でも、本当にタイブレーク制で球数制限が出来るかどうかは分かりません。
試合が後半になり延長戦になりそうな展開になれば、タイブレーク方式になるのですから、監督としてはエースをなるべく続投させていたいという気持ちになるでしょう。
何しろ大ピンチからの登板になるのですから、エース以外のピッチャーでは荷が重いです。絶対的なクローザーを持つ高校チームなんてそうそうありませんし、その試合にエースを温存しておくと、その前に敗色濃厚の可能性が高くなるのですから、高校野球ではやっぱりエースの連投となると考えられます。それにタイブレーク制で一旦点が入ると、かえってピッチャーは球数を投げるような状況になってしまうことも考えられます。
「甲子園の詩」という本の著者の作家、故・阿久悠さんは、以前、和歌山・智弁和歌山高が優勝したときに「高校野球はもしかしたら二十世紀の偉大な発明かもしれない」「人間の祭典として完成品が競い合う場でなく未完成品が未熟を超えて人々に夢や感動を与えるのだから。これは世界にも類を見ない素晴らしい発明だ」と書きました。
未完成だからこそ、高校野球で将来の夢を絶って欲しくないとも思えます。