野球小僧 season16

丸坊主にして自由な時間をなくしてまで,青春をそこに注ぐことに意味がある。

シン・ゴジラ

「シン・ゴジラ」とは,2016年7月29日に日本で公開された,日本のゴジラシリーズとしては通算29作目。総監督および脚本は庵野秀明さん。特技監督は樋口真嗣さん。

現実ニッポン 対 虚構ゴジラ。

テーマは,「今の日本に初めてゴジラが現れたら,我々は一体どうなるのか?」であり,怪獣の存在しない現実日本に現れたゴジラという災害に対し,官僚,政治家,自治体や民間企業などが立ち向かっていく。

ストーリーの焦点はゴジラによって引き起こされた災害とその対応に絞られており,人間関係などについてはほとんど表現されていない。

そのストーリーの一部。

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首相官邸 大会議室
アクアトンネル浸水事故及び東京湾における水蒸気爆発に関する複合事案対策会議(第1回)
里見農林水産大臣は豪州外遊中のため,不在
河野純・総務大臣:隧道事故による重軽傷者数名の搬送は完了しております。東京湾海上に関しましては既に消防艇及び情報収集のヘリが出動しあらゆる事態に備えております。以上です
柳原邦彦・国土交通大臣:次に東京湾沿岸等への対処ですが,噴火による噴石等の被害の危険性があるため警戒レベルを「避難準備」とし,羽田空港も万が一を考えて全便欠航として,危機管理を徹底しております。(メモをわたされ)失礼,訂正します。羽田空港の欠航による経済的損失よりも安全を優先するための,やむを得ない処置として全便欠航とし――以下,省略――トンネル浸水事故の原因とされる新たな海底火山等ですが,現在までのところ幸い有毒ガス等は検出されず,気象庁および海保海洋情報部の調査研究チームを現地に送り,速やかな事故原因の撤退究明に努めさせていただきます。(メモをわたされ)あ。ただいま噴火活動が急速に沈静化しているとの報告が入りました
葉山達也・経済産業大臣:もう収まったのか
鵜飼真一朗・財務大臣:たいしたことなかったな
矢口蘭堂・内閣官房副長官(政務担当):総理。改めて提言いたします。やはり原因は巨大不明生物である可能性があります。各省庁の検討を願います
東竜太・内閣官房長官:矢口。閣僚会議の席だ。冗談はよせ
大河内清次・内閣総理大臣:そうだ,議事録にも残るんだ。政府に恥をかかせる気か。そんなモノがいるわけないだろ!
葉山達也・経済産業大臣:(前略)――見込まれております。えー,いまだ復旧のメドが立っておりません。そのため損失額はその後さらに増大するものと思われ――
東:(伝言を受けて)中断!会議を一時中断します!テレビ!テレビ点けて!

アナウンサー:信じられません!まったく信じられません!未だかつてこのようなことがあったでしょうか。前代未聞です。海面に突如現れた物体を捉えました。現在姿は海中に消え,目視することができませんが,先程巨大な尻尾のようなものが海面上に姿を現しました!

関口悟郎・文部科学大臣:なっ,何だいまのは?
大河内:尻尾?
東:ええ,尻尾ですね
赤坂秀樹・内閣総理大臣補佐官(国家安全保障担当):矢口の冗談が現実ならば,受け入れるしかないか
東:事態急変のため,会議を中止します。関係閣僚は至急,総理執務室へ

首相官邸 総理執務室
大河内:これは一体,何だ?
関口:巨大不明生物とし,か呼称しようがありませんが・・・目下,省内や大学や研究機関の生物学等,多方面から学識経験者を召集し,研究の有識者会議を設置すべく,候補者リストを作成しております
大河内:早く正体を知りたい!急いでくれ!
関口:はい
赤坂:総理。緊急の課題は尻尾の正体よりも今後の対応です
大河内:あっそうか
金井光二・国家公安委員会委員長兼内閣府特命担当大臣(防災担当):しかし,こいつは,思ったより想定外すぎるぞ
郡山肇・内閣危機管理監:ですが,対処プランの選択肢はシンプルです。静観つまり野放し。もしくは捕獲か駆除か,それとも湾外に追い出すか,ですね
国平修一・副総理兼外務大臣:でしたら,駆除でよろしいかと
葉山:賛成ですね。トンネル事故との関連はさておいても羽田は全便欠航,東京湾内は無期限全面封鎖されており,既に莫大な経済的損失が出ております
河野純・総務大臣:私も駆除に同意します
金井:そうだ。一刻も早く駆除すべきだ。そうだろう,防衛省!

松本・防衛省運用政策統括官:えー。過去有害鳥獣駆除を目的とした出動は幾度かありますが,海自による東京湾内での火器の使用は前例もなく何とも・・・
柳原:まあまあ。ことを荒立てず,穏便に追い出せないのか
菊川俊介・環境大臣:総理。各学会と環境保護団体が,貴重な新生物として捕獲調査を提言しています。定地網を至急湾内に用意してほしいそうです
金井:いや,ここは駆除だ!魚雷とか使えばすぐ済むだろ
花森麗子・防衛大臣:お気持ちはわかりますが,ここは火器使用も含め本省に検討の時間を頂きたい
関口:私からも,ぜひとも捕獲を視野に入れた検討を願います
矢口:速やかに,巨大不明生物の情報を収集し駆除,捕獲,排除と各ケース別の対処方法についての検討を開始してください
平岡・内閣官房副長官補:それ,どこの役所に言ったんですか?

(途中略)

首相官邸 記者会見室
大河内:巨大不明生物はアクアトンネル多摩トンネル等に甚大な被害をもたらし,現在東京都大田区の呑川を遡上しております。その正体は現時点では不明ではありますが,上陸という事態は想定しづらく,水深が浅くなり川岸に打ち上げられたとしても自重で潰れ死に至ると思われますので,どうかご安心ください。繰り返します。巨大不明生物の上陸はあり得ませんので,都民,国民の皆様,どうか御安心ください
壱岐治・内閣総理大臣秘書官(防衛省):総理。会見中に失礼します
大河内:(耳打ちされ)え,蒲田に?

東京都大田区 蒲田
男性A:撮ってないで早く!
男性B:早く逃げろ!
男性A:早く!

首相官邸 記者会見室
記者:なんで・・・さっき「上陸はあり得ない」って・・・

首相官邸 廊下
大河内:どうするんだ!上陸はあり得ないと言っちゃったあとだぞ!
安西光・総理政務秘書官:ですから,文言はアレンジせず,報道官の原稿のままお読みくださいと・・・
大河内:ハッキリ云わんと国民は安心せん!心が伝わらんだろう!
安西:おっしゃるとおりです。いま,なぜ上陸できたのかを識者に問い合わせ中です
大河内:済んだことはもういい!現状はどうなってる!?
郡山:総理。これは緊急災害対策本部を設置する案件と考えます
大河内:わかった

首相官邸 大会議室
巨大不明生物に対する緊急災害対策本部の設置に関する閣僚会議(第1回)
東:設置に関する閣僚会議を終了します。で,みなさん,これで

首相官邸 廊下
澁沢真・総理事務秘書官(外務省):形式的な会議は極力排除したいが,会議を開かないと動けないことが多過ぎる
尾高泰之・総理事務秘書官(財務省):効率は悪いが,それが文書主義だ。民主主義の根幹だよ
澁沢:しかし,手続きを経ないと会見も開けないとは

首相官邸 記者会見室
東:先ほど政府は,東京に上陸した巨大不明生物に関する緊急災害対策本部を設置いたしました。これにより国民皆様の安全に対して万全の対策を講じ,速やかな避難活動を実行するため,都庁及び関係省庁との連絡を密とした・・・

首相官邸 総理執務室
危機管理担当要員(防衛省):巨大不明生物は大田区から品川区方面へ移動中。平均移動速度は時速13km程度と判明
菊川:図体はでかいのに。ずいぶんと遅いなぁ
矢口:この速度でも,3時間あれば首都圏を縦断します
関口:東京は意外と狭いしもろいからな
河野:やばいぞ。被害が尋常じゃなく拡大している
金井:だからこそ,すぐに駆除すべきじゃないか!
花森:しかし,現場が人口密集地です。いまは攻撃よりも避難を優先すべきです
郡山:総務省と国交省に避難先の区域と搬送手段の確保を進めてくれ

東京都庁
都庁職員:官邸より当庁に対する,シャドウ・エバキュエーションを考えた避難処置の指示を受理しました!
小塚・東京都知事:なぜ,すぐに避難指示が出せないんだ
田原・東京都副知事:なにせ想定外の事態で,該当する初動マニュアルが見当たりません
小塚:災害マニュアルは,いつも役に立たないじゃないか!すぐに避難計画を考えろ!
田原:しかし,このような事態の防災訓練も行なっておりませんし,パニックの回避を考えるならば,避難区域の広域な指定も困難です
川又・東京都副知事:ここは住民の自主避難に任せるしかありません
恩地・警視総監:現場には交通統制によるコントロールを徹底させます

東京都品川区 国道15号 第一京浜
アナウンス:この信号は止まっています。直ちに降車して警察官の指示にしたがって行動してください。区内全域に避難指示が発令されました。住民の方は直ちに避難してください
父親:(マンションの一室)ママ!急いで!

東京都庁
小塚:このままでは被害が拡大するばかりだ。公安委員会に連絡をとってくれ。政府が動かないのなら都から有害鳥獣駆除として,自衛隊の治安出動要請を出すしかない

首相官邸
危機管理担当要員(防衛省):遂に治安出動か
危機管理担当要員(内閣府):それより第76条の武力攻撃と解釈して,防衛出動の方が武器使用に対応しやすいんじゃないか?

危機管理担当要員(内閣官房):武力攻撃と解釈するのは難しい。76条では武力攻撃を与えてくる主体を国または国に準ずる物と想定している。防衛出動は出せない
危機管理担当要員(経産省):いまはそんなことを議論してるときじゃないだろ。どう見ても自衛隊しか事態に対処できない
危機管理担当要員(防衛省):だがそれは市街地で自衛隊が戦闘を始めることになる
危機管理担当要員(警察庁):おそらく総理は渋るよな

首相官邸 総理執務室
矢口:ですから,総理。自衛隊の運用や国民の避難など政府による事案対象のあらゆる統合が必要です。直ちに災害緊急事態の布告の宣言を願います
赤坂:いまは超法規的な措置として防衛出動をくだすしか対応がありません。この国でそれが決められるのは総理だけです
大河内:しかし,なぁ・・・いままで出たことがない大変な布告だぞ。そのうえ初の防衛出動の命令とは
郡山:総理。警察による短時間での避難誘導は困難です。防衛出動となると,逃げ遅れた住民を戦闘事態に巻き込む覚悟が必要になります
大河内:いやいや,それは・・・
国平:日米安保を適用し,在日米軍に駆除を肩代わりしてもらうのはどうですか?
花森:いえまず,この国の政府と自衛隊が動くべきです。安保条約があっても米軍はあくまで支援の立場です
菊川:しかし,あれは生物です。下手に刺激すると被害が拡大する可能性もあります
赤坂:そう,生物です。ですから人の力で駆除することができます。同じ自然災害と区分しても,地震や台風とは違います
矢口:総理。国民を守ることが第一です
東:総理。ここは苦しいところですが被害の拡大を防ぐためにも承認の御決断をいただかないと
大河内:いまここで決めるのか?聞いてないぞ
東:時間がありません。御決断を

TV中継
記者:先程,初の災害対策基本法の災害緊急事態の布告を総理が宣言。巨大不明生物に対し自衛隊初の防衛出動が決定されました。緊急措置として国会の承認を事後に回し,害虫駆除を目的とした戦後初の武力行使命令を総理がくだした模様です
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いまや「虚構ゴジラ」ならぬ,「現実クマ」

現実ニッポン 対 現実クマ。

あしたもよろしくお願いします。