「逆輸入(ぎゃく-ゆにゅう)」とは,一般的に国内メーカーが海外への輸出向けに生産して,いったん輸出した製品を国内へ再輸入して生産国内で販売すること。ただ,それ以外の意味でも使用することがある。
たとえば,日本で生まれた人物が海外進出して成功し,帰国後にブレイクを果たした場で,ディーン・フジオカさんが「逆輸入俳優」「逆輸入タレント」と呼ばれたり,プロ野球でマック鈴木さん,多田野数人さんや加藤豪将さんが高校,大学を卒業後にNPB球団を経ることなくMLBで活躍し,その後日本野球機構(NPB)にドラフト指名されたことから「逆輸入ルーキー」などと呼ばれました。
さて,先日のNPBドラフト会議では米国スタンフォード大・佐々木麟太郎選手が横浜DeNAベイスターズ,福岡ソフトバンクホークスから1位入札時に指名され,抽選の結果,ホークスが交渉権を得ました。

通常,NPBドラフトでは大学生の場合にはプロ志望届が提出されないと指名対象にはなりませんが,2025年にNPBがMLBに確認したところ,「MLBのドラフトで対象となる選手について,その前年に行われるNPBのドラフトでも指名が可能」との返事があったとのこと。
また,NPBは2023年にドラフトの規約にて,「海外の学校に在学中の日本選手をドラフト会議で指名した場合,選手との契約締結交渉期間を会議翌年の7月末日に延長」と一部改正(それまでは会議翌年の3月末日まで)。
MLBドラフト指名対象
・指名対象になるのは,米国,カナダ,プエルトリコに居住し,いずれかの国の高校,短大,大学,コニュニティ・カレッジ(2年制大学),独立リーグに在籍する選手
・4年制以上の大学に在籍する選手は卒業見込みの有無に関わらず,3年以上在学,または2年以上在学している21歳以上
・指名を希望しない選手は5月1日までにMLB事務局に申請
NPBドラフト指名対象
・過去にNPB球団に入団したことがない選手で,日本国籍を持っている,もしくは日本の中学校,高校,大学,日本高等学校野球連盟および全日本大学野球連盟の加盟校に在学した経験を持ち,プロ志望届を提出した選手
・日本の学校に在学中の場合,ドラフト会議の翌年3月卒業見込み,大学の場合は4年間在学している選手
・社会人野球のチームに入部した選手で中卒や高卒での入部の場合は入部後3年,それ以外の場合は2年を経過している選手
・米国の大学に在籍し,かつ当該ドラフトの翌年に行われるMLBドラフトで指名対象になる選手
・日本の独立リーグは社会人野球と同様に扱うものの,プロ志望の選手は所属初年度から指名することが可能
・日本プロ野球を介さずに直接MLBや海外の独立リーグなど,日本国外のチームに在籍した選手
NPBの方が細かくて複雑ですが,今回,佐々木麟太郎選手がNPBドラフトで指名できたのは,MLBの「4年制以上の大学に在籍する選手は卒業見込みの有無に関わらず,3年以上在学,または2年以上在学している21歳以上」,NPBの「米国の大学に在籍し,かつ当該ドラフトの翌年に行われるMLBドラフトで指名対象になる選手」ということ(のはず)。
特段,サプライズということではなく,球団にとって必要な選手としての指名だということ(たぶん)。個人的にサプライズというならば,オリックス・バファローズから6位指名された,米国ジョージア大・石川ケニー選手の方。
石川ケニー選手は明秀日立高時代に甲子園で活躍。その後,亜細亜大に進学。1年時から活躍し,2024年から米国のサマーリーグに参加し,シアトル大に編入。今季からジョージア大へと転校。バファローズは,「高校時代から二刀流として活躍しており,大学進学後,投手としての才能も開花。今季は全米優勝経験のあるジョージア大に転向し,150km/hを超えるストレートに加え,打っても豪快なホームランを放つなど無限の可能性を感じさせるなど,今後の活躍に期待がかかる」とコメント。
そもそも,2024年の指名一覧をよくよくながめますと,東京ヤクルトスワローズから育成1位で指名された根岸辰昇選手も,米国ノースカロライナA&T州立大。
慶應義塾高時代に甲子園に春夏連続出場。卒業後に米国への進学を決意し,エージェントをつうじて自身の打撃映像を送り,オレンジコースト短期大にスカウトされ入学。卒業後,NCAA1部で野球を続けるため,加盟する約300校のほとんどにメールを送りミドルテネシー州立大学へ編入。ここでも主軸として活躍し,同じく1部に所属するノースカロライナA&T州立大学に転校し,活躍。しかし,新型コロナウイルス感染症以降のMLBドラフトにおいて指名選手が削減されたこともあり日本へ帰国し,プロ志望届を提出。
さらに近年では東北楽天ゴールデンイーグルスの永田颯太郎選手。米国の大学ではありませんが,名古屋産業大から国立台湾体育運動大へ留学し,2022年に育成ドラフト4位で指名されています。
これらの選手がいわゆる逆輸入選手になるのです。
一方でMLBドラフトの指名条件を満たしてMLBドラフト指名を受けた選手は過去に5人。
坂本充 外野手(アリゾナ・ウエスタン短期大):2002年 コロラド・ロッキーズ
鷲谷修也 外野手(デザート短期大):2009年 ワシントン・ナショナルズ
藤谷周平 投手(ノーザン・アイオワ大):2009年 サンディエゴ・パドレス
加藤豪将 内野手(ランチョ・バーナード高):2013年ニューヨーク・ヤンキース
西田陸浮 内野手(オレゴン大):2023年シカゴ・ホワイトソックス
※藤谷周平選手は入団拒否し,2010年にNPBドラフトで千葉ロッテマリーンズから指名され入団
これらの選手は,言うならば輸出選手と言うことなのでしょう。
さてさて,トヨタ自動車が米国で生産した車両を日本に逆輸入する方針を米国へ伝える方向で調整しているとのこと。これは米国の対日貿易赤字の削減につなげるのが狙いとのこと。
ただ,日本で生産したトヨタ車ではなく,米国で生産したものですから,逆輸入ではなく輸入なのであります。
あしたもよろしくお願いします。